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【Excelで1時間】従業員10名以下向け!一番簡単な「固定費と変動費」の分け方と業種別シミュレーション

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「うちの会社、毎月の利益がバラバラだな…」「売上は増えているはずなのに利益が残らない…」こんなことを感じたことはありませんか?その原因を知るために必要な工具が「固変分解」です。でも、難しく考える必要はありません。零細企業であれば、シンプルな方法で十分です。

本記事では、従業員10名以下の零細企業の経営者や経理担当者が、1時間あれば自分でできる固変分解の方法を、具体的な例を交えて解説します。難しい数学は使いません。Excel(またはGoogleスプレッドシート)とメモ帳があれば、誰でもできます。

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目次

なぜ固定費と変動費を分ける必要があるのか?

利益が読めない理由

「今月の売上は100万円だから利益は20万円くらいかな」と思ったら、実は5万円だった。次の月は売上が同じ100万円なのに利益は25万円だった。こんなことが起こるのは、費用の中に「売上に関係なく発生する費用」と「売上に応じて増減する費用」が混在しているからです。

この2種類の費用を分けて理解することで、売上がいくらなら黒字になるのか、売上が30%減ったら利益はどうなるのか、といった経営判断が可能になります。

例えば、こんな場面で役立つ

  • 「来月から営業活動を強化して売上を30%増やそう。その時に必要な追加資金はいくら?」→ 変動費だけ増えるので資金計画が立てやすい
  • 「今月は売上が50%に落ちてしまった。どうしよう」→ 固定費さえ把握していれば、どこまで赤字になるかが予測できる
  • 「この商品の値引き要望が来た。受けられるのか?」→ 限界利益を知れば、値引きしても利益が出るラインが分かる

まず理解すること:固定費と変動費の定義

むずかしく考えず、この2点だけ覚えてください。

固定費:毎月同じくらい発生する費用

売上がゼロでも発生する、事業をやっている限り必ず払わなければいけない費用です。

代表的な固定費

項目金額例(月額)
給与(正社員、経営者)50~200万円
家賃(事務所、工場、店舗)10~100万円
電気代の基本料金1,000~5,000円
インターネット代5,000~20,000円
携帯電話(会社用)10,000円
火災保険料1,000~10,000円
自動車保険料3,000~10,000円

変動費:売上が増えると増える費用

売上が増えると一緒に増える、売上がゼロなら発生しない費用です。イメージとしては「商品やサービスの提供に直結する費用」です。

代表的な変動費

項目
商品の仕入代金洋服屋さんなら仕入れた洋服の代金
食材の仕入代金飲食店なら使った食材代
配送料商品を送るのに必要な送料
外注費製造業で外注先に払う加工料
販売手数料売上に応じて払う仲介手数料
パート代(時給)繁忙期に時給で雇う人の給料

重要:業種によって固定費と変動費は大きく異なる

ここで重要なポイントがあります。同じ科目でも、業種によって固定費になったり変動費になったり変わるということです。

例えば「人件費」を考えてみます。

  • 飲食店やサービス業では、客が多い時期は従業員を増やし、少ない時期は減らすことが多いため、人件費は半分を変動費として扱うこともあります
  • 製造業では、一定の従業員をずっと雇用しているため、人件費はほぼ固定費です
  • 小売店では、基本的に一定の従業員数のため、固定費とします

また「光熱費」も同じです。

  • 美容室では、営業時間中のドライヤーやシャンプー台で多くの電力を使うため、客数が増えると光熱費も増える傾向があり、一部を変動費と見なすことがあります
  • 一般的な事務所では、季節による変動はありますが、営業していない時間帯の空調代や照明代など基本料金が大部分のため、ほぼ固定費です

ここが固変分解の難しさですが、同時に経営判断の精度を左右する重要なポイントです。自社の特性に合わせた分類が必要です。

業種別比較:3つの異なる業種で固変分解を比べる

実際に3つの異なる零細企業で、固変分解がどう異なるか見てみましょう。同じ月売上100万円でも、業種によって利益が大きく変わります。

ケース1:小売店(洋服店)の固変分解

小売業は「仕入原価が高い」ことが特徴です。売上に対して7割~8割が仕入原価になります。

月売上:100万円の場合

費用項目金額分類理由
商品の仕入原価700,000円変動費売上に直結。売上が増えれば仕入も増える
店員の給与150,000円固定費基本給。売上と無関係に毎月払う
店舗家賃150,000円固定費毎月決まった額
配送料30,000円変動費売上が多い月は配送も多い
電気代20,000円固定費基本料金が大部分
通信費5,000円固定費毎月固定
合計1,055,000円
固定費325,000円
変動費730,000円

分析結果

  • 変動費率 = 730,000 ÷ 1,000,000 = 73%
  • 固定費 = 325,000円
  • 利益 = 1,000,000 – 730,000 – 325,000 = -55,000円(赤字!)

このケースの特徴

小売店は仕入原価が非常に高いため、変動費率が70~80%と非常に高いです。つまり、売上が1円増えると73円の仕入が必要になるということです。利益を出すには、売上をもっと増やすか、仕入先との交渉で仕入原価を下げる必要があります。

損益分岐点売上(黒字になる最低売上)

325,000 ÷ (1 – 0.73) = 1,200,000円

つまり、月売上が120万円ないと黒字にならないということです。この店は現在100万円なので、あと20万円売上を増やす必要があります。

ケース2:飲食店(カフェ)の固変分解

飲食店の特徴は「食材原価は30%程度と低い」ことです。しかし「人件費が高い」という別の課題があります。

月売上:100万円の場合

費用項目金額分類理由
食材費300,000円変動費売上に直結。お客さんが多い月は食材も多く使う
オーナーの給与200,000円固定費毎月決まった給与
アルバイト代250,000円変動費繁忙期は多く雇用し、閑散期は少なくする(時給制)
店舗家賃150,000円固定費毎月決まった額
水道光熱費50,000円固定費営業していない時間帯の基本料金が大きい
通信費(スマホ)5,000円固定費毎月固定
合計955,000円
固定費405,000円
変動費550,000円

分析結果

  • 変動費率 = 550,000 ÷ 1,000,000 = 55%
  • 固定費 = 405,000円
  • 利益 = 1,000,000 – 550,000 – 405,000 = 45,000円(黒字!)

このケースの特徴

飲食店は小売店と比べると変動費率が55%と低いです。これは食材原価が低いからです。ただし、人件費が固定費・変動費の両方に含まれているため、実は固定費(オーナー給与+家賃+光熱費=400万円)がかなり高いです。

利益は出ていますが、月405,000円の固定費を払わないと事業が続きません。もし売上が50%落ちてしまうと、変動費は275,000円に減りますが、固定費は変わらないため、利益は大幅に減ります。

損益分岐点売上(黒字になる最低売上)

405,000 ÷ (1 – 0.55) = 900,000円

つまり、月売上が90万円あれば黒字になります。現在100万円なので、比較的安全です。

ケース3:美容室の固変分解

美容室の特徴は「材料費が非常に低い」ことです。カラーリング剤やシャンプーは原価率10%程度と非常に安いため、代わりに「人件費が高い」という特性があります。

月売上:100万円の場合

費用項目金額分類理由
シャンプー・カラー剤など80,000円変動費売上に直結。施術数が多い月は多く使う
スタイリスト給与350,000円固定費基本給は毎月決まった額(ただし指名料は変動費扱いもあり)
店舗家賃100,000円固定費毎月決まった額
水道光熱費60,000円固定費ドライヤーの使用量は多いが、基本的には固定
シャンプー台やドライヤー減価償却費50,000円固定費毎月決まった額
通信費・予約システム10,000円固定費毎月固定
合計650,000円
固定費570,000円
変動費80,000円

分析結果

  • 変動費率 = 80,000 ÷ 1,000,000 = 8%
  • 固定費 = 570,000円
  • 利益 = 1,000,000 – 80,000 – 570,000 = 350,000円(かなり高い利益!)

このケースの特徴

美容室は変動費率がわずか8%と非常に低いです。これはシャンプーやカラー剤などの材料費が非常に安いからです。売上が1円増えるたびに、わずか8円の材料費で対応できるという素晴らしい構造です。

ただし、固定費が570,000円と高いです。これはスタイリストの給与です。美容室は「人が商品」であるため、給与を削ることができません。つまり、利益を出すには売上を増やすしかないということです。

損益分岐点売上(黒字になる最低売上)

570,000 ÷ (1 – 0.08) = 620,000円

つまり、月売上が62万円あれば黒字になります。現在100万円なので、売上が38%落ちてもまだ黒字という、非常に安定した事業です。

3つの業種を比較:何が見えるか?

指標小売店(洋服)飲食店(カフェ)美容室
月売上100万円100万円100万円
変動費率73%55%8%
固定費32.5万円40.5万円57万円
利益-5.5万円(赤字)4.5万円(黒字)35万円(黒字)
損益分岐点売上120万円90万円62万円
安全度合い要注意普通安全

それぞれから見えること

小売店が抱えやすい課題

小売店は仕入原価が73%と非常に高いため、利益を出すには「売上をたくさん増やす」か「仕入原価を下げる」という2つの道しかありません。同時に固定費(給与+家賃)が圧縮しづらいため、「薄利多売」の経営になりやすく、経営リスクが高いです。

飲食店が心がけるべきこと

飲食店は変動費率が中程度のため、バランスの取れた経営が可能です。ただし、固定費の中に「アルバイト代」を変動費として扱っているため、実際には客数減少に敏感に対応する必要があります。つまり、「繁忙期と閑散期の客数差」がそのまま利益差に反映されます。

美容室が享受するメリット

美容室は変動費率がわずか8%と非常に低いため、売上が増えると利益が劇的に増えます。売上100万円で35万円の利益(35%の利益率)は、小売店には夢のような数字です。ただし、固定費(特に人件費)が高いため、スタイリストの売上を確保することが極めて重要です。

自社の業種では何が変動費か:業種別チェックリスト

あなたの業種では、何を変動費・固定費に分類するべきか、確認してみてください。

製造業の場合

項目分類判定ポイント
原材料費変動費生産数が増えると増える
部品代変動費生産数に応じて増える
外注加工費変動費外に出す工程数に応じて増える
製造スタッフの給与固定費基本給は固定だが、季節社員なら一部変動費
工場の家賃固定費毎月決まった額
工場の光熱費固定費機械を使う量は売上に比例するが、基本料金が大部分
機械の減価償却費固定費毎月決まった額

建設業・工事業の場合

項目分類判定ポイント
資材費変動費工事規模に応じて増える
労務費(職人)変動費工事数が増えると増える
外注費変動費工事を外注する量に応じて増える
事務所給与固定費毎月決まった額
事務所家賃固定費毎月決まった額
営業車の燃料費変動費営業活動が活発な月は増える
営業車の保険料固定費毎月決まった額

塾・教室などのサービス業の場合

項目分類判定ポイント
教材費変動費生徒数が増えると増える
講師代(時給制)変動費生徒数に応じた時間雇用
講師給与(固定給)固定費毎月決まった額
教室家賃固定費毎月決まった額
光熱費固定費ほぼ固定だが、冷暖房使用料は季節で変動
広告宣伝費固定費毎月定額を投資する場合が多い
通信費固定費毎月決まった額

実務での注意点:業種別の落とし穴

小売店・飲食店の注意点

季節変動が大きい場合がある

特に飲食店やアパレルは季節による売上変動が大きいです。例えば、アイスクリーム屋さんは夏に売上が集中し、冬に落ち込みます。このような場合、「通年での平均」で固変分解するか、「季節ごと」に分けるかの判断が必要です。

初心者であれば、通年での平均で固変分解することをお勧めします。

製造業の注意点

人件費の扱いが難しい

製造業では、正社員は固定費ですが、季節社員やパートは変動費になります。どこまでを変動費にするかで、固変分解の結果が大きく変わります。

保守的に考えて、「基本的には固定費だが、繁忙期の追加雇用分だけを変動費」と分ける方法がシンプルです。

サービス業(塾・美容室など)の注意点

人件費が利益を左右する

サービス業は材料費が低いため、利益を出しやすいのが特徴です。ただし、人件費(講師代・スタイリスト給与)が経営を左右します。

「生徒1人あたりいくらの売上が必要か」「お客さん1人あたりいくらの給与を払えるか」という視点で、人件費の効率を常にチェックすることが重要です。

零細企業向け:最も簡単な固変分解の方法

複雑な方法は忘れてください。零細企業は「勘定科目法」という最もシンプルな方法で十分です。

ステップ1:過去3ヶ月分の請求書と領収書をかき集める

決算書がなくても大丈夫。以下のデータが手に入れば十分です。

  • 月別の売上金額(銀行の入金記録でOK)
  • 月別に払った費用の領収書(できれば3ヶ月分、最低でも1ヶ月分)

完璧でなくて構いません。「大体これくらい」で十分です。

ステップ2:Excelに費用データを入力する

ここからが実践です。Excelを使って、領収書のデータを入力していきます。

Excelの基本的なレイアウト

以下のような4列の表を作ります。

A列(日付)B列(勘定科目)C列(金額)D列(分類)
2024/12/1給与200,000固定
2024/12/1家賃150,000固定
2024/12/3商品仕入500,000変動
2024/12/5配送料25,000変動
2024/12/10電気代15,000固定
2024/12/15食材費80,000変動
2024/12/20通信費10,000固定
2024/12/25店員時給30,000変動

これだけです。シンプルですが、これが固変分解の基本です。

ステップ3:月別に合計を計算する

Excelで月別に「固定費合計」と「変動費合計」を計算します。

計算例:2024年12月分

固定費合計 = 200,000(給与)+ 150,000(家賃)+ 15,000(電気代)+ 10,000(通信費)
          = 375,000円

変動費合計 = 500,000(仕入)+ 25,000(配送)+ 80,000(食材)+ 30,000(時給)
          = 635,000円

ステップ4:変動費率を計算する

「この月の売上はいくらだったか」と「変動費合計」から、変動費率を計算します。

売上が1,500,000円の場合:

変動費率 = 635,000 ÷ 1,500,000 = 42.3%

ステップ5:利益シートで月ごとの状況を把握する

さらに詳しく知りたい場合は、以下のような「月ごと利益分析シート」を作ります。

売上固定費変動費変動費率利益
12月1,500,000375,000635,00042.3%490,000
1月1,200,000375,000507,60042.3%317,400
2月1,800,000375,000762,60042.3%662,400
平均1,500,000375,000635,00042.3%490,000

このシートがあれば、月ごとの売上と利益の関係が一目瞭然です。

より詳しい実装例:小売店の実際の月間データ

ここで、実際の小売店が12月に支払った全ての費用をExcelで管理する例を示します。

12月の領収書リスト(Excelに入力)

A列(日付)B列(勘定科目)C列(金額)D列(分類)E列(備考)
2024/12/1給与(経営者)250,000固定毎月定額
2024/12/1給与(アルバイト)100,000固定毎月定額
2024/12/1家賃150,000固定毎月固定
2024/12/2商品仕入(洋服)350,000変動売上に応じて購入
2024/12/3商品仕入(アクセサリー)75,000変動売上に応じて購入
2024/12/5配送料35,000変動販売量に応じて
2024/12/8返品処理-50,000変動返品分をマイナス
2024/12/10電気代18,000固定毎月ほぼ同額
2024/12/10通信費8,000固定スマートフォン代
2024/12/15火災保険料5,000固定毎月定額
2024/12/18追加仕入120,000変動季末セール用
2024/12/20新聞広告代30,000固定毎月定額広告
2024/12/22梱包材料費12,000変動発送用梱包材
2024/12/25大掃除アルバイト15,000固定臨時だが月末定番
2024/12/28インターネット代6,000固定毎月定額
小計合計1,124,000

月末に集計する

固定費の合計
250,000 + 100,000 + 150,000 + 18,000 + 8,000 + 5,000 + 30,000 + 15,000 + 6,000 = 582,000円

変動費の合計
350,000 + 75,000 + 35,000 + (-50,000) + 120,000 + 12,000 = 542,000円

総費用 = 582,000 + 542,000 = 1,124,000円

12月の売上と利益を把握

銀行の記帳を確認すると、12月の売上は 1,200,000円 だったとします。

12月の利益 = 売上 - 固定費 - 変動費
         = 1,200,000 - 582,000 - 542,000
         = 76,000円

変動費率 = 542,000 ÷ 1,200,000 = 45.2%

さらに進める:翌月の予測

1月の売上を「前年比で20%減少する」と予測した場合:

1月予想売上 = 1,200,000 × 0.8 = 960,000円

1月の固定費 = 582,000円(変わらない)

1月の変動費 = 960,000 × 45.2% = 433,920円

1月予想利益 = 960,000 - 582,000 - 433,920 = -55,920円(赤字!)

この予測から分かること

1月の売上が20%落ちると赤字になるということが事前に分かりました。そのため、以下の対策が必要かもしれません。

  • 新春セールをやって売上を上げる
  • 固定費(給与など)を一時的に削減する
  • 変動費(特に高額仕入)を控える

このように、固変分解ができると先手を打った経営判断が可能になります。

実務での注意点:零細企業が陥りやすい誤解

注意1:完璧を目指さない

「全ての費用を100%正確に分類しないと」と思う必要はありません。上記の「業種別チェックリスト」を参考に、大体の分類ができれば十分です。

注意2:業種の一般的な分類に従う

迷ったら、あなたの業種では一般的にどう分類されるかを確認してください。小売店なら「仕入原価は変動費」、飲食店なら「食材費は変動費」という具合に、業種の常識に従うのが無難です。

注意3:異常な月は除外する

「今月は火災があったから、修繕費が100万円かかった」という異常な月は分析から外します。通常の月だけで固変分解するのが、より正確です。

よくある質問:Q&A

Q1:Excelで関数を使って自動計算したいが、やり方は?

A:最もシンプルなのはSUMIF関数を使う方法です。例えば、D列に「固定」「変動」と入力されている場合:

固定費合計 = SUMIF(D:D,"固定",C:C)
変動費合計 = SUMIF(D:D,"変動",C:C)

このように関数を使うと、費用を追加するたびに自動計算されます。ただし、最初は手計算でもかまいません。

Q2:うちの会社は複数の事業をやっているが、固変分解できる?

A:できます。ただし、全社ベースではなく「事業別」に固変分解するのがお勧めです。例えば、飲食店とお弁当の配達をやっているなら、この2つを分けて固変分解します。共通の費用(本社給与など)は、売上比で配分します。

Q3:季節商品だから、冬と夏で全く違う。どうする?

A:「通年の平均」で固変分解するか、「季節別」に分けるかの2つの方法があります。最初は通年の平均で十分です。後で「冬はどうなるのか」「夏はどうなるのか」という質問が出たら、季節別に分け直します。

Q4:毎月の売上がすごく変動する。固変分解の意味ある?

A:むしろ意味があります。売上が変動するからこそ、「固定費がいくら発生し、変動費率がいくつか」を知ることで、利益予測ができるようになります。

Q5:決算書がない。何を使えばいい?

A:銀行の入金記録と、領収書があれば十分です。領収書の日付を見れば、「この月は家賃、給与、これだけ払った」が分かります。

Q6:固変分解を毎月やらないといけない?

A:最初の1回はやってください。その後は「売上が大きく変動した時」だけ見直す程度で十分です。ただ、業績が悪化した時は、改めて固変分解をやり直して、状況を把握するのは有益です。

最後に:業種別の固変分解だからこそ見えること

固変分解の最大のメリットは、自社の経営特性が見えることです。

小売店は「薄利多売」の運命にあります。仕入原価が70%を超えるなら、利益を出すには売上を大幅に増やすしかないのです。そしてそれは多くの小売店経営者が無意識に知っていることかもしれません。

飲食店は「客数」に極めて敏感な事業です。変動費率が55%なら、客が30%減ると利益は大幅に減少します。つまり、常に「新規客開拓」と「リピート率向上」に力を入れる必要があります。

美容室は「安定して利益が出やすい事業」です。変動費率8%の環境で、売上が増えれば増えるほど利益が増えます。ただし、スタイリストの給与が固定費なので、「スタイリスト1人あたりの売上を確保する」という課題があります。

このように、業種によって経営課題が全く異なります。固変分解をすることで、「うちの会社は何を改善すべきか」という経営課題が明確になるのです。

まずは先月の領収書を集めて、自社の固変分解を1回やってみてください。その時点で、自社の経営の「本当の姿」が見えます。

同じ月売上100万円でも、業種によって利益が-5.5万円から35万円まで大きく異なります。自社はどこに位置しているのか。そして、その業種の中でも、競合他社と比べて固定費や変動費率は高いのか低いのか。

そうした経営判断の第一歩が、この簡単な固変分解なのです。

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